今回は、「豆知識NO.1」として「有意差」についてお話します。既にご存知の方は飛ばしてください。
まず、「優位差」ではなくて「有意差」です。読んで字のごとく、「意味のある差」ということです。
「有意差あり」とは簡単に言いますと、「誤差や偶然で生じた差ではなく、意味のある差が間違いなく存在する」ということです。
サイコロの6が出る確率は1/6ですが、Aというサイコロを六回振って6が二回出たら「このサイコロは6がよく出る特別なサイコロだ」とは必ずしも断定できません(偶然だったかもしれません)。しかし、六百回振って6が二百回出たら、「このサイコロは誤差や偶然ではなく間違いなく6がよく出るサイコロだ」と言えます。これが「有意差」です。
この「間違いなく存在する」ことを証明するのは統計学的解析です。
今回の治験では、「p<0.05」が判定基準として使われました(0.05を用いるのがこの種の治験では一般的)。このp<0.05とは、平たく言うと「治験結果が誤差や偶然である確率が5%未満である」という意味です。
この計算は複雑な統計学的な解析によるもので、ここでは割愛します(カイ二乗検定、信頼区間など)。
ITK-1の場合は、「統計学的に解析した結果、この治験結果は、誤差や偶然である確率が5%以上であった」ということです。
具体的に言いますと、中央値は大きな差が出ていても、両グループの曲線がどこかの部分で重なっていたりすると有意差はないと判定されることがほとんどです(二つの曲線がすべての部分で離れていることが必要)。
今回の治験では、抗がん剤で疲弊し、状態に差異のある被験者ですから、結果に大きなばらつきが出るのは、容易に想像がつきます。
もし約300人の被験者の状態がほぼ同じであったなら、結果は変わっていたかも知れません。がんの治験の難しさが、ここにあります。
しかし、現行の治験制度をクリアーするためには、この高くて厚い壁を超える必要があります。
はたしてpはいくつだったのか?サブ評価項目がどうだったのか?今後、この結果を踏まえてどうしていくのか?
富士フイルムの今後のデータ分析に注目したいと思います。