昨日、久留米大学がんワクチンセンター長伊東恭悟氏の名前で「テーラーメイドペプチドワクチン臨床試験への新規受付終了のお知らせ」が発表されました。
まずは、適切な判断であると感じました。
もともと伊東先生の「テーラーメイドワクチン」は、胡散臭い免疫療法とは一線を画した、その効果を科学的に証明すべく治験を経て申請・認可され、健保適応を勝ち取り、広く患者さんに副作用の少ない比較的安価な良い薬を提供する、という目的でスタートしていました。
ですから、主要評価項目で「有意差なし」の判定が出たからには、少なくとも今後新規の患者さんを受けるというのは理屈に合いません。
患者さんを受け続ければ、胡散臭い免疫療法と変わらなくなるからです。
もちろん、伊東先生の「テーラーメイドワクチン」は、一定の効果はあると思いますが、やはり、承認申請までは至らなかった訳ですから、新規受入れ中止は妥当な判断です。
ただ、富士フイルムが今後の分析結果をもってどう 判断するかは別の話ですが、投資家として過大な期待は禁物でしょう。
グリーンペプタイド(現ブライトパスバイオ)は、もともと久留米大学発のITK-1を世に出すためのベンチャー企業として生まれました(初代社長は久留米大 山田亮氏)。
社長を引き継いだ永井健一氏は、奔走してITK-1をやっとのことで富士フイルムにライセンスアウトしました。もちろん、永井社長もITK-1の成功を願って邁進していたと思いますが、その半面、テーラーメイドワクチンの限界にも気付いていたのではないでしょうか。
そして、ガン免疫療法の世界の最先端を突き詰めて行くうちに「完全個別化ガン免疫療法、ネオアンチゲン」にたどり着いたのだと思います。社名を換え、パイプラインを増やし、ネオアンチゲンの動画作成も、そのことの表れと、私は見ています。
私見ですが、ブライトパスの真価が問われるのは、これからだと思います。
具体的にはGRN-1301(ネオアンチゲン)とiPS-T、iPS-NKTに期待しています。
また、抗体医薬にも短期的な楽しみができました。
GRN-1201のキートリーダとの併用も粛々と進んでいるとのことですが、こちらは併用治験花盛りで競合相手も多くて楽観は出来ないと思っています。
今回の久留米大学からの発表で、多少足元の株価には影響がある(ITK-1の延長戦を期待した投資家は短期なので、売りは出るでしょう)かも知れませんが、中期的な観点での期待感はいささかも変わるものではありません。
そして、伊東先生の粘り強い研究への熱意の尊さも、今回の第三相の結果がどうであれ、いささかも変わるものではないと思います。