記事➡直近の当ブログの記事(「理由なき高騰の・・・」)に対して、賢者の読者様からコメントをいただきました。
それで、さらに深堀して探索してみました。
注目すべきは前ブログ記事で言及しました2月3日に公開された特許情報です。
公開されました特許出願資料の「明細書」を詳しく読み、以下抜粋しました(番号は私が付しました)。
明細書抜粋を参照しながら、お読み願います。
(1)まず、発明の名称は「がんペプチドワクチンおよびその製造方法」とありますが、明細書の6、にある通り、この発明は「がんペプチドワクチン」と他薬剤との併用治験で、しかも他薬剤は「ペムブロリズマブ(メルク社)」と明記されていますのて、この特許は間違いなくGRN-1201に関する特許です。
(2)次に、3、の「背景」を読むと、この文章は、永井社長が説明会で話している前ふりのフレーズそのままです。この特許の独創性(新規性)の背景となる現状説明です。「GRN-1201とキイトルーダとの併用療法はこれまでにはなかった画期的ながん新薬ですよ」ということを力説したいのでしょう。特許取得には「新規性」が必要ですから。
(3)そして、5、「発明の効果」では、「本開示のがんペプチドワクチンは、ヒト被験者においてCTLを誘導し、免疫チェックポイント阻害剤との併用において優れた臨床効果を発揮する。」と結論付けています。
GRN-1201とキイトルーダとの併用は効果がありますよ、ということです。
これらを踏まえて、この特許を解釈すると➡️
「BP1201のキイトルーダとの併用治験は手応えがあり、効果も確認できたので、特許を申請しよう」という目的のために申請されたのではないでしょうか?
もしライセンスアウトするとなれば、特許の取得は不可欠です。
この特許が申請されたのが昨年7月28日です。
この昨年7月の時点からブライトパスは、「GRN-1201にゴーサインを出した」のではないかと推測します。
もちろん、近々リリースされる第II相第1ステージの好結果を担保するものではありません。
ただ、私はこれまでGRN-1201には否定的な考えを持っていましたが、「まんざら捨てたものでもないのかな!」と私は考えを修正しました(笑)。
今回、改めて特許出願書を精読しましたが、極めて精緻な資料であり、この申請には、莫大な時間とコストがかかっています。
今後の展開はまだまだ未知数ですが、少なくともブライトパス永井社長はGRN-1201の中間結果に手応えを感じている可能性はかなり高いと思われます。
さもなければ、見込みのない特許出願など、手間隙かけてトライするはずはありません。
先日の高騰は、このことに気付かれた投資家が発信源なのかも知れません。
以上、私見ですが、個人的には楽しみが増えました。
賢者の読者の皆様に感謝いたします。
明細書抜粋
1、発明の名称
がんペプチドワクチンおよびその製造方法
2、技術分野
本出願は、日本国特許出願第2020-128412号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。本開示は、がんペプチドワクチンおよびその製造方法に関する。
3、背景技術
世界では、年間約1,800万人が新たにがんを発症し、うち約960万人が死亡している。日本では、2019年のがん罹患数予測は約100万人であり、死亡数予測は約38万人とされている(https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html)。このようながんに対する主な治療方法としては、手術、放射線療法、化学療法、分子標的薬、抗体医薬、免疫療法、細胞治療等が開発されている。
特に近年においては、CTLA-4やPD-1、PD-L1に代表される免疫チェックポイント分子をターゲットとした免疫チェックポイント阻害剤が開発された。
これらの阻害剤を用いた免疫療法は、従来の治療方法では達成し得なかった優れた臨床効果を得ることができることが示され、様々な免疫チェックポイント阻害剤の開発ならびにこれらを用いた治療方法の開発が盛んにおこなわれている。
しかし、免疫チェックポイント阻害剤は、すべての患者において有効な臨床効果が得られるわけではなく、免疫チェックポイント阻害剤に不応答の患者はおおよそ2~5割存在し、また、臨床効果が得られないがん種も存在している。
このため、免疫チェックポイント阻害剤の奏効率を高めるために、当該阻害剤と化学療法剤や分子標的薬等の薬剤の併用療法も盛んに検討がされている。
免疫チェックポイント阻害剤と併用する薬剤の候補の一つとしては、同じく免疫療法に用いられる腫瘍抗原ペプチドを用いるがんワクチンが挙げられる。生体による腫瘍細胞の排除には、細胞性免疫、とりわけ細胞傷害性T細胞(CTLと称する)が重要な働きをしており、CTLは、腫瘍細胞上の抗原ペプチド、すなわち腫瘍抗原ペプチドとヒト白血球抗原(HLA)クラスI抗原との複合体を認識した前駆体T細胞が分化増殖して生成されるものであり、がん細胞を攻撃する。よって、腫瘍抗原ペプチドを薬剤として用い、がん細胞に対するCTLの活性を惹起し、がん細胞を攻撃させることにより、腫瘍縮小効果等の臨床効果を得ることができる。
このような腫瘍抗原ペプチドとしては、例えば、ルドウィヒ研究所で発見されたMAGE-A3抗原やEGFRvIII、gp100等の腫瘍特異的抗原由来のペプチドや、腫瘍関連抗原由来のペプチドが検討されてきた。
しかしながら、これらのペプチドを含むがんワクチンは単独では十分な臨床効果を得ることができず、現在においても承認されたがんワクチンは存在しない。また、例えば、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法として、抗CTLA-4抗体とgp100ペプチドを含むがんワクチンとの併用試験も実施されたが、併用療法による効果を証明するには至らなかった。
4、発明の概要
①発明が解決しようとする課題
本発明の目的の1つは、がんペプチドワクチンおよびその製造方法を提供することにある。
②課題を解決するための手段
本発明者らは、がんペプチドワクチン、特に免疫チェックポイント阻害剤との併用に適したがんペプチドワクチンについて鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、配列番号1~4の4種類のペプチドを含むがんペプチドワクチンがヒト被験者においてCTLを誘導し、特に免疫チェックポイント阻害剤との併用において優れた臨床効果を発揮することを見出した。また、前記4種類のペプチドを含むがんペプチドワクチンを安定的に製造し提供しうる処方およびその製造方法を見出した。
(略)
5、発明の効果
本開示のがんペプチドワクチンは、ヒト被験者においてCTLを誘導し、免疫チェックポイント阻害剤との併用において優れた臨床効果を発揮する。また、本開示の製造方法は、有効成分である腫瘍抗原ペプチドの溶解性および安定性が担保されたがんペプチドワクチンを提供することができ、医薬品の安定的な製造および供給を可能とする。
(略)
本開示のがんペプチドワクチンは、以下に示す配列番号1~4の4種類のペプチドを含む。
Asn-Val-Leu-His-Phe-Phe-Asn-Ala-Pro-Leu(配列番号1)
Ala-Ser-Leu-Asp-Ser-Asp-Pro-Trp-Val(配列番号2)
Lys-Leu-Lys-His-Tyr-Gly-Pro-Gly-Trp-Val(配列番号3)
Leu-Leu-Gln-Ala-Glu-Ala-Pro-Arg-Leu(配列番号4)
(略)
6、薬剤
本臨床試験では、製造例1で製造したペプチドを含む凍結乾燥製剤とペムブロリズマブ(メルク社)とを用いた。
以上、抜粋。
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