記事→昨日、このブログの記事で取り上げました「医学系及びゲノム研究倫理審査委員会第三回議事録」の「ネオアンチゲンを標的とした個別化がんペプチドワクチン療法の開発を⽬指した前臨床研究」について、さらにご説明したいと思います。
1.まず、この前臨床研究は「ネオアンチゲンを標的とした個別化がんペプチドワクチン療法の開発」ですから、GRN‐1301ではなく、永井社長が「The big thing」とコメントしている「完全個別化ペプチドワクチン療法」であり、そのターゲットがネオアンチゲンです。
2.では、「前臨床研究」とは具体的にどのようなものを言うのでしょうか?
一般的な前臨床研究は、新薬の候補である新規物質(シーズ)を人体へ投与・検査する臨床試験(治験)に先立って、人体への安全性など様々な研究が必要です。動物試験や品質試験を通じて、安定性、有効性・安全性を確認するといった臨床研究の前段階の開発・研究を前臨床研究(非臨床研究)と言います。
通常は、創薬研究段階で創製された膨大なシーズの中から新薬として有効と思われるものを徹底的にスクリーニングし、その後『薬理試験(薬効薬理試験)』『薬物動態試験』『毒性試験薬剤学試験(物理化学的試験)』などの研究・開発が並行して進められていきます。
一般的なプロセスは以下の通りです。
3.ただし、がんワクチン薬の前臨床試験では、その特殊性から別途ガイダンス(厚労省、2016年12月26日)が設けられています。
過去に実施されたがんワクチンの第Ⅰ相臨床試験の結果分析から、がんワクチンの投与による重篤な副作用のリスクは極めて低いことが示されています。 一方で、がんワクチンの後期臨床試験において有効性の証明に失敗するケースが続いています(要は毒にはならないが効き目が弱い、ということ)。 そこで、ワクチン抗原の設計を改善し、種々のアジュバント(ワクチンの効果を増強する物質、デリバリーシステムを含む)を使用することによって、がんワクチンの効力を高める工夫が広く模索されています。ガイダンスでは、こうした特殊性を踏まえた非臨床試験を提示しています。
→がん免疫療法開発のガイダンス2016 がん治療用ワクチン・アジュバント 非 ...
4.今回の議事録を読むと「試料・情報の提供者等の人権に配慮するため」という但し書きがありますので、ヒトの資料(がん患者の手術後のがん細胞)を使って行うと読めます。
実際、ブライトパスと共同研究している国立がん研究センター(中面哲也分野長)では、以前(2017年12月)から患者さんに対し資料(手術で切除したがん細胞の一部)の提供をオープンに求めて研究を開始しています。
→個別化 T 細胞受容体遺伝子導入 T 細胞療法の臨床応用を目指した肝胆膵 ...
5.この「ネオアンチゲンを標的とした個別化がんペプチドワクチン療法の開発」は海外ではライバルが研究を進めていますので、議事録に「また研究の独創性を保全するため非公開とする」とあるのは頷けます。先はまだ長いと感じる投資家もいらっしゃると思いますが、基礎研究を完了して、いよいよ非臨床試験に入るということは、研究者にとっては大きな節目です。
理論上は極めて確度の高いプロジェクトですので、しっかりと足場を固めつつスピード感も意識しながら、済々と取り組みを進めて欲しいと思っています。
ちなみに議事録によると、試験番号は「BP20181214」。BPはブライトパスの頭文字ですね。川崎研究所では、抗体医薬のリストアップと並行して「完全個別化」にも既に着手しているのでしょうか?また、がん研やアカデミアなど多くの共同研究者の中で、ブライトパスはどのような役割を果たそうとしているのでしょうか?
そういえば、上に貼りました国立がん研の資料の3ページ目に「ブライトパス 中村徳弘」の名前があります。