記事→「2020年3月決算短信」が本日リリースされました。
一読してポイントを以下の通りまとめてみました。
1、2020年3月期の業績(2019年4月1日~2020年3月31日)→
当期純利益、すなわちこの大部分は研究開発費で△1,823百万円でした。昨年度は△1,665百万円でした。
想定通りでした。この結果、残された純資産は3,235百万円となりました(昨年度末の時点では5,096百万円ありました)。先日の第三者割当てで約20億円の資金調達を計画していますので、計画通り進めば、合計で約や52億円の手元資金を確保できることになります。
2、2021年3月期の業績予想(2020年4月1日~2021年3月31日)→
今期の研究開発費の予定額は、1,907百万円と見込まれています。実績(1,823百万円)比較では微増計画と、なっています。主に米国での治験に多くを費やしていると思われます。
3、今後の見通し→
今後の各パイプラインの見通しですが、ほぼ既知の情報が書かれています。以下パイプラインごとに報告センテンスの抜粋を列記しました。やや長文ですが、各パイプラインの進捗状況の確認の意味も込めてご一読願います。
(1)GRN-1201
「現在臨床試験ステージにあるGRN-1201は、非小細胞肺がんを対象に日本発ワクチンとしては初となる、免疫チェックポイント阻害剤との併用による第二相臨床試験を米国で進めています。現在第二相臨床試験のステージ1の段階にあり、一定の累積症例数に至ったところで中間評価を行い、目標とする奏効
率をクリアしていれば、ステージ2に進み、最終的に統計的な評価ができるよう症例数を積み上げて行きます。」
(2)iPS-NKT
「まもなく第一相臨床試験(医師主導治験)が始まるiPS-NKTは、固形がんの治療にiPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用いる、新規のマスターセルバンク型の他家細胞医薬です。当社は、2018年に理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画して現在は共同研究を進めており、iPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を取得しています。世界でも初となるiPS再生NKT細胞療法の臨床応用実現に向け、当社は本医師主導治験を後押しするとともに、それに続く第二相臨床試験(企業治験)を見据えた製造工程改良を進めてまいります。」
(3)HER2 CAR-T細胞療法(BP2301)
「HER2 CAR-T細胞療法(BP2301)は、血液がんでは70-90%の奏効率に至ることもあるCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)細胞療法の固形がんへの展開を目指すものです。CAR-Tの固形がんへの展開には、腫瘍局所における免疫抑制によりCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという血液がんには無い課題があります。そこで、若いメモリーフェノタイプの、体内で長期生存可能で、よって持続的な抗腫瘍効果発現が期待されるCAR-T細胞の製造法を、信州大学らと共同で創製しました。本パイプラインを臨床試験へと進めるべく、薬効薬理、安全性を評価する非臨床試験を実施してまいります。」
(4)完全個別化ネオアンチゲンワクチン(BP1101)
「完全個別化ネオアンチゲンワクチン(BP1101)は、個別化医療の次世代型ワクチンです。がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏功が相関することから、これをがんの目印として認識するT細胞の抗腫瘍効果が同抗体により高まると考えられています。臨床試験へと進めるために、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立大学法人東京大学、地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター、国立大学法人三重大学と共同研究を進めています。患者特有のネオアンチゲンワクチンを選定するのに機械学習されたアルゴリズムの構築が必要となるため、それを担うバイオインフォマティクス体制を整備しています。こちらも引き続き非臨床試験を実施してまいります。」
(5)BP1401
「BP1401は、免疫抑制が強くかかる腫瘍微小環境において抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化されるよう環境を整えていくために、樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。がん種や患者個人差により、腫瘍にT細胞が浸潤せずがん免疫が成立しない“Cold Tumor”になっています。BP1401により、樹状細胞のTLR9を刺激
し自然免疫を先に誘導することによってT細胞の浸潤が促される “Hot Tumor”への転換を図ります。全身に行く静脈内投与を可能にする脂質製剤化によって、安全性の面から腫瘍局所にしか投与できない先行開発品との差別化が図られています。こちらも非臨床試験を実施してまいります。」
(6)抗体医薬パイプライン
「抗体医薬パイプラインは探索研究段階にあり、免疫に抑制がかかり腫瘍増殖を促進する腫瘍微小環境の生成に深く関わるアデノシンの産生に関わるCD73を阻害する抗体であるBP1200、PD-1/PD-L1と並んでT細胞に抑制シグナルを入れ疲弊させるTIM-3の結合を阻害する抗体であるBP1210は、先行開発品よりも機能面で優れていることが示唆されるシード抗体を創製済みで、この他にも別の免疫チェックポイント分子に対する抗体を複数創製中です。今後リード最適化とさらなる機能評価、ならびにより機能の高い新規クローンの取得を進める予定です。」
(私見)→サブライズはありませんが、1年前の決算報告の「今後の見通し」(✳️以下に添付)と比べると、パイプラインには着実な進捗が見られます。昨年の「今後の見通し」は具体性に欠けていましたが、今回は、各パイプラインに個別具体的なコメントが付されています。
永井社長は、久留米大からバトンを受けたITK-1を経て、GPの最後のパイプラインでありGRN-1201を第Ⅱ相まで引き上げました。これがどうなるかは神のみぞ知る、ですが、永井社長にすれば、自身で発掘したパイプラインであるiPS-NKTを初めとする複数のパイプラインが揃ってきたことで、「さあ、これから!」と臥薪嘗胆を狙っているのではないかと、推察します。
今後のブライトパスの情報発信に期待します。
✳️参考:昨年の「今後の見通し」
「当社は、米国においてメラノーマ(悪性黒色腫)及び非小細胞肺がんを対象に進めるGRN-1201の開発進捗に引き続き努めてまいります。非小細胞肺がんを対象とする第二相臨床試験は、免疫チェックポイント阻害抗体の次のテーマとなる複合的免疫療法としてペンブロリズマブとの併用試験を行っており、海外戦略開発品として試験の進捗に注力してまいります。また、既存パイプラインの推進に加え、日進月歩でサイエンスが進む環境に迅速に適合していくためにも、新規シーズの導入は今後も引き続き積極的に行っていく方針であるとともに、さらには川崎創薬研究所において創出している新規医薬品候補の開発を順次進めてまいります。免疫チェックポイント阻害抗体の登場以降、世界的な盛り上がりを見せるがん免疫療法においては、現在も日々新たな技術・アプローチが登場しております。このように新規治療薬の創出機会拡大とその市場規模の伸長が見込まれる環境下において、当社は時代の趨勢を注意深く見極め
るとともに、がん免疫療法の統合的なアプローチを念頭においた新規シーズの自社創製を進めてまいります。完全個別化がん免疫療法の開発を目指した共同研究では、既存の研究開発ネットワークを深化させることで、よ
り強固な共同研究基盤に発展させるとともに、最先端のサイエンスの知見・ノウハウの獲得を通して、次世代がん免疫治療のターゲットの探索と臨床試験へ向けた開発を進めてまいります。」
追って決算報告動画がリリースされると思います。
本日リリースされた決算短信→https://pdf.irpocket.com/C4594/yCGV/YVVj/Kj9S.pdf