記事→あまり期待せずに「おまけ」程度に考えているとは言いつつ、やはり気になるので久留米大の動向について調べてみました。
久留米大がんワクチンセンターの「新着情報」は未だ更新されていませんが、何人かの賢者さんが、久留米大が新たに申請した特許に関する最新情報をSNSで発信されていらっしゃいますので、これを深堀りしてみました。
昨年11月22日に「発明の名称 : テーラーメイド型ペプチドワクチン剤に対する脳腫瘍患者の適格性を判定する方法」が国際公開されています(久留米大が昨年5月16日に申請したもの)。
簡単にこれまでの経緯をまとめますと、
久留米大発のテーラーメイドワクチンITK-1については、
①膠芽腫(脳腫瘍)対応の治験が医師主導で先行し、一昨年3月末に「主要評価項目有意差なし」で第三相を終え、その結果を寺崎先生がASCOで口演されました。そして、治験は1年間延長されました。
②一方、①に1年遅れて開始していた前立腺がん対応の治験は富士フイルムに導出されましたが、こちらも昨年3月末に「主要評価項目有意差なし」となり、5・17ショックに繋がりました。
ただ、久留米大としては、長年育ててきた「テイラーメイドワクチン」を諦めきれず、医師主導の①のデーターを解析して、この特許申請に漕ぎ着けたのだと思います。
偶然か必然か、本特許の申請日は、昨年の5月16日、5・17ショックの前日です。
この特許申請の内容をひと言で言うと「テーラーメイドワクチンが効く膠芽腫患者さんの見分け方を発見しました。その判定方法を特許申請します」というものです。
申請originalは、大部で解りにくいので、以下に抜粋を書させていただきました。
⚪国際公開番号:WO2018/212237
⚪国際公開日:2018.11.22
⚪国際出願2018.5.16
⚪出願人:学校法人 久留米大学
⚪発明者:伊東恭悟 、七條茂樹
⚪発明の名称 : テーラーメイド型ペプチドワクチン剤に対する脳腫瘍患者の適格性を判定する方法
⚪申請の概要
1、技術分野
本発明は、テーラーメイド型ペプチドワクチン剤に対する脳腫瘍患者の適格性を判定する方法に関する。
2、背景技術
・がん免疫療法は一般に受動免疫療法と能動免疫療法とに大別される。受動免疫療法には、がん細胞の増殖にかかわる分子を阻害する抗体を投与する抗体療法などがあり、能動免疫療法にはがん抗原ペプチドを患者に接種するがんワクチン療法などがある。
・抗体療法にかかる抗PD-1抗体が、肺がん治療薬として上市されたが、一部の対象者にしかその効果が認めらないことが明らかになった。
・ペプチドワクチンを用いるがんワクチン療法においても、同一がん抗原由来のペプチド1種のみを含むペプチドワクチン剤が用いられる場合、療法効果が認められない場合があることが知られている。近年、多種類のがん抗原から同定されたペプチドライブラリーに対する各対象者の免疫反応性を予め評価して、その対象者に効果が見込める複数種のペプチドワクチンを選択したテーラーメイド型(オーダーメイド型または個別化)ペプチドワクチン剤を用いるがんワクチン療法が可能となってきている。
・近年、各個人の最適医療(precision medicine)が注目されており、最適医療に資する新技術の開発は医療経済面からも重要な課題として認識されている。
3、発明の概要
(1)発明が解決しようとする課題
・テーラーメイド型ペプチドワクチン剤の調製前または投与前に、該テーラーメイド型ペプチドワクチン剤に対する対象者の適格性を判定できれば、不適格と判定された対象者には、別の療法を受ける機会が提供されるという利益がもたらされる。また、医療経済面からは当該ペプチドワクチン剤の調製または投与に係る費用を削減することができるという利益がもたらされる。一方、適格と判定された対象者は、奏功の可能性が高い当該ペプチドワクチン剤を用いたがん免疫療法を受けることができる。従って、テーラーメイド型ペプチドワクチン剤を用いるがんワクチン療法分野には、調製されるペプチドワクチン剤に対する当該対象者の適格性を予め判定できる方法に対する要求がある。
・本発明者らは、HLA-A24陽性のテモゾロミド治療抵抗性膠芽腫患者を対象者としたテーラーメイド型ペプチドワクチン剤を用いる第III相二重盲検比較試験を行った。その結果、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス(PS)がグレード0~2の対象者において、該対象者の血液中の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)レベルを評価し、さらにSART2ペプチドに対する該対象者の免疫反応性および該対象者の血液中のMonocyte Chemoattractant Protein-1(MCP-1)レベルのいずれか又はその両方を評価することにより、前記テーラーメイド型ペプチドワクチン剤に対する該対象者の適格性を予め判定できることを見出し、本発明を完成させた。
(2)課題を解決するための手段
・本発明は、下記する、脳腫瘍に罹患した対象者が少なくとも1種のペプチド抗原を含むテーラーメイド型ペプチドワクチン剤の適格者であるかを判定する方法、前記判定方法に使用されるキット、及び、脳腫瘍に罹患した対象者を、少なくとも1種のペプチド抗原を含むテーラーメイド型ペプチドワクチン剤を投与することにより治療する方法を提供する。
・本発明の1つの態様は、脳腫瘍に罹患した対象者が、少なくとも1種のペプチド抗原を含むテーラーメイド型ペプチドワクチン剤の適格者であるかを判定する方法であって、前記ペプチドワクチン剤に対する前記対象者のリスクを評価する工程;および前記評価に基づいて前記対象者が前記ペプチドワクチン剤に対する適格者であるかを判定する工程を含み、前記評価が、GM-CSF、1つ以上のSART2、MCP-1、VEGF、IL-6、IL-7、IL-10、IL-17、IL-1RA、CCL4、及びハプトグロビンからなる群より選択される、予後規定因子の少なくとも1つに基づく、判定方法に関する。
・本発明の1つの態様は、GM-CSF、1つ以上のSART2、MCP-1、VEGF、IL-6、IL-7、IL-10、IL-17、IL-1RA、CCL4、及びハプトグロビンからなる群より選択される少なくとも1つの予後規定因子を測定するための試薬を含む、前記判定方法に使用されるキットに関する。
・本発明の1つの態様は、脳腫瘍に罹患した対象者を、少なくとも1種のペプチド抗原を含むテーラーメイド型ペプチドワクチン剤を投与することにより治療する方法であって、該対象者は、ペプチドワクチン剤に対する前記対象者のリスクが評価され、該評価に基づいて前記ペプチドワクチン剤に対する適格者であると判定された者であり、前記評価が、GM-CSF、1つ以上のSART2、MCP-1、VEGF、IL-6、IL-7、IL-10、IL-17、IL-1RA、CCL4、及びハプトグロビンからなる群より選択される、予後規定因子の少なくとも1つに基づく、治療方法に関する。
4、発明の効果
・本発明に係る判定方法によれば、脳腫瘍患者のために選択されたテーラーメイド型ペプチドワクチン剤に対する当該患者の適格性を治療開始前に判定できる。その判定結果が「不適格者」であった場合、当該患者には他の治療を受ける機会がもたらされ、医療経済面からは当該ペプチドワクチン剤の調製または投与に係る費用を削減することができるという利益がもたらされる。一方、その判定結果が「適格者」であった場合、当該患者は不奏功のリスクが軽減された当該ペプチドワクチン剤を用いたがん免疫療法を受ける機会が提供される。
(抜粋、以上)
この特許が承認され、新たな方向性が見出だされることを期待します。
また、伊東恭悟先生の不屈のご努力に改めて敬意を表したいと思います。